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MOTTOX MEETS Luca Suzumoto~ワインインポーターとイタリアンレストランの出会いから生まれる新しい食文化


◆モトックスのワインインポーターの枠を越えた想い

(株)モトックスはワインのインポーターであるが、これまで福岡ではワインインポーターの枠を越えた活動をしてきている。
例えばスパークリングワインのイベントFesta Del Spumante(フェスタ・デル・スプマンテ)を2012年より独自開催。2014年には参加店舗が300を越えるなど大きな話題性と注目を集めている。
さらに昨年よりイタリア・トスカーナ地方に注目したToscanAmore(トスカーナモーレ)を開催。80種におよぶトスカーナのワインの紹介だけではなく、トスカーナワインに合わせる料理の組み合わせを各参加店舗が提案するスタイルも話題を集めた。

それら活動の背景には(株)モトックス・西日本チームのある想いが反映している。
それは、福岡がスペインバスク地方のように地域全体がオーベルジュのようになり、内外の観光客を集める場所になってほしいという想いである。

これまでモトックス・西日本チームは営業活動として福岡の地に足を運び、多くの飲食店を訪れることで福岡の飲食店の可能性を確認。特に素材面においての国内では有数の食材宝庫と言って良いポテンシャルを知ることで「街のオーベルジュ化」がこれからの福岡が進むべき道ではないか?という想いを抱くようになった。

そのため必要なのはただ素材が美味しいだけではなく、クオリティの高い料理と多様性のある食の文化の形成だ。

そう考えたモトックス・西日本チームはその中でもワインの分野で出来ることとして、先ずはワインを飲む習慣を増やしてもらうためにフェスタ・デル・スプマンテを開催することで、ワインを日常的に楽しむ入り口としてスパークリングワインの普及を目指し、さらにはトスカーナモーレを開催することで料理とワインのマリアージュという、様々な組み合わせを楽しむ“多様性”を福岡のお客様に知って頂くきっかけ作りを行ってきたのだ。

モトックス・西日本チームのリーダー、大戸拓己氏は多様性のある食文化についてこう語ってくれた。

「私は状況や招待する人や一緒に行く人によって使い分けられるレストランを幾つも知っているということは、大人の嗜みだと思っています。そして、自分が選んだレストランで、自分で料理を選ぶことが出来、なおかつその料理に合わせたワインを自分でチョイス出来るようになることが“かっこいい大人”の振舞いだと。私自身は若い頃、そういったことを大人の先輩に教わって来ました。しかし、今はそういう機会も減っていると思います。福岡には素晴らしい飲食店が数多くあり、さらには世界には美味しいワインが星の数ほどある。その中で、自分で店を選び料理を選びワインを選ぶことが出来る大人が増えることが食文化の成熟に繋がると思っています。そういう人が1人でも増えてもらいたいという気持ちの中でフェスタ・デル・スプマンテやトスカーナモーレを開催してきたのです」

自分で料理を選んで、自分でワインをチョイスすることが大切と語る(株)モトックス・西日本チームの大戸拓己氏

自分で料理を選んで、自分でワインをチョイスすることが大切と語る(株)モトックス・西日本チームの大戸拓己氏



 

◆ミシュラン・ビブグルマンにも選ばれた名店~福岡市薬院 Luca Suzumoto

そのモトックス・西日本チームの想いに深く共感し、フェスタ・デル・スプマンテやトスカーナモーレなどのイベントに積極的に参加している福岡の飲食店の中でも、特に「同じ志を持って下さっている」とメンバーが感じている福岡市の飲食店がある。

その店とは薬院駅すぐ近く、城南線の通りから1本奥に入ったテナントビルの2階にあるイタリアン「Luca Suzumoto」。

薬院の隠れ家的イタリアンとして知る人ぞ知る存在であるが、昨年はミシュランガイド福岡・佐賀版においてビブグルマンにも選ばれることで、その存在感を内外に広く示した。

その「Luca」に足を踏み入れると、カジュアルで落ち着いた雰囲気の店内からはまるで友人の家に呼ばれて料理をご馳走してもらうかのような「おもてなし感」が溢れているのが感じられる。さらに、そこで出される料理もイタリアでの修業経験のある鈴本紀彦シェフが腕によりをかけ作る一級の品々。

鈴本シェフは福岡市内のイタリアンで修業をした後、2004年から渡伊し、1年半かけてイタリア国内各地の飲食店のキッチンを歴任。特にトスカーナに隣接するウンブリア州では半年間滞在し、その地の伝統的な料理を学ぶ。
帰国後は福岡市の「ラ・ヴィレッタ」のシェフをオープン時より務め、2012年にはオーナーシェフとして「Luca」を開業。
イタリア料理とワインをもっと身近に親しんで欲しいとの気持ちから自らソムリエの資格を取るなど、福岡にイタリア料理の文化とワイン文化の両方を根付かせようとする想いの強いオーナーシェフである。

鈴本シェフ自身は「Luca」の料理を「先ずは素材ありき。季節感のある料理を意識しています。イタリアの各地で勉強をしましたが、それらの地方色の強い料理の味をそのまま福岡で表現しようと思ってはいません」と語る。

料理の地方性とは鈴本シェフにとって醤油の味の違いのようだと言う。
例えば関東の醤油の辛みが強いのはマグロなどの赤身の魚を常食することで必然的に培われた味であり、逆に白身の魚の多い九州では甘みの強い醤油が作られている。
その地域により食材の方向性が違い、それにより調味料の味も変わり、料理自体の味も変化する。イタリア各地の料理の味もその地域で獲れる食材により生まれた味だからこそ、福岡では福岡で使える食材に合わせた味を作る必要がある。

例えば1月のランチのメイン料理に出していた「ブリのパン粉焼き」は冬の旬の寒ブリを使った食材ありきの一品。
ブリの風味を活かしたシンプルな味付けは、正に「福岡のイタリアン」と呼ぶにふさわしい美味しさである。

その一方でイタリアの伝統的な技法を強く意識した料理もある。
1月のディナーにも出されている「キタッラ 魚介と芽キャベツのソース」は、イタリア語でギターを意味する“キタッラ”というパスタが使われているが、ギターのように絃を貼った板で手打ちされて作られる細く平たい形が特徴的なパスタだ。
このキタッラを作る板はイタリアから取り寄せたもので、もし同じものを国内で手に入れようとすると特注するしかないという大変珍しいもの。手打ちパスタ独特のもっちりした食感と、平べったい形からくるソースとの馴染みの良さと、細さからくる繊細な味わいが冬の魚介類の風味にマッチした極上の一皿だ。

鈴本シェフはこのような伝統的な技法を使った料理について「自分自身が伝統を学んだから出来ること」と話をしてくれた。伝統を学び、伝統を知っているからこそそれをアレンジすることも出来ると。

そのようなイタリアの伝統的な技法を使いつつも福岡の素材に合わせてアレンジした料理が提供されているのが「Luca」の料理の特徴であり、それらを通して新しいイタリア料理の文化を発信しようとしているのが「Luca」というお店そのものと言っても良いかもしれない。

素材を活かし、伝統技法をアレンジする「Luca」の料理【左】「ブリのパン粉焼き」旬の材を活かしたシンプルな味わいが逆に豊かな風味を生み出している。【右】「キタッラ 魚介と芽キャベツのソース」。お皿の後ろにあるのが減を張ったキタッラ用の器具。イタリアの伝統的な技法を福岡の食材でアレンジした一皿。

素材を活かし、伝統技法をアレンジする「Luca」の料理【左】「ブリのパン粉焼き」旬の材を活かしたシンプルな味わいが逆に豊かな風味を生み出している。【右】「キタッラ 魚介と芽キャベツのソース」。お皿の後ろにあるのが減を張ったキタッラ用の器具。イタリアの伝統的な技法を福岡の食材でアレンジした一皿。



 

◆選択肢の多さと多様性から生まれる新しい食文化

その鈴本シェフはワインについて、自店では自らがお客様に接することでイタリアワインの魅力を伝えるよう心がけているが、同時に店の外でもイタリアワインをもっと身近に親しんで頂くための活動を「グルッポ ヴィノーカ」という団体の活動を通して行っている。

「グルッポ ヴィノーカ」はイタリアワインの魅力をより多くの人に知ってもらうために、福岡市内のイタリアンのシェフやソムリエが集まって作られた団体であり、鈴本シェフはその設立メンバーの1人でもある。
2013年からはインポーターや酒販店主導ではなく市内の飲食店が主導してイタリアワインを紹介するイベント「VINO!VINO!!VINO!!!(ヴィーノ!ヴィーノ!!ヴィーノ!!!)」を開催しており、鈴本シェフもイベント当日は試飲会のブースに入ってお客様にイタリアワインの魅力を直接お話ししている。

その福岡のワイン市場の動向を鈴本シェフは「5年前に比べるとずいぶんワインが浸透してきた」と感じている。
だが同時に「まだまだの部分もあります」とも語る。

例えばお客様に好みのワインの味をお聞きすると「しっかりと濃い味の赤」と言われることが多いのだが、その答えからは多様な味のワインが存在するイタリアワインの世界のほんのまだ一部だけしか知られていないと感じることが多いと鈴本シェフは言う。

「イタリア料理と同じくイタリアワインも多種多様性が魅力です。様々な美味しさがあり、だからこそ選ぶ楽しさがある。その多様性をもっと知ってもらいたいと思っています」

そう語る鈴本シェフの目線は、正しくモトックス・西日本チームと同じ方向を向いている。

豊かさとは選択肢の多さの中に生まれ、文化は多様性の中から生まれる。
多様性は料理で言えばその地域の食材の持つ多様性の中で生まれ、ワインはそれが醸造される地域性やその地域独自のブドウ品種の中で生まれる。

そして、その料理とワインの様々な組み合わせを楽しむ妙も多様性が生み出す文化であり、福岡の食材をベースにした料理と、それに合わせたワインのマッチングは、そのまま福岡の独自の食文化に繋がる。

その中で必要なのは先ずは店自身が多様性を容認し、そこから福岡だからこそ出来る料理を発信しながら、同時にワインも料理も選択肢の多さを楽しむお客様を育てること。

その先にあるのはより豊かな福岡独自の食文化に他ならない。

「Luca」の鈴本シェフはそれを飲食店として志しながら様々な活動を行い、モトックス・西日本チームはワインインポーターとして志して、同じ方向を向く飲食店を応援しながら、自らもその想いを実現するための活動を行っている。

両者は時に協力し合いながら、時にそれぞれの立場から生まれる別々のアプローチで、福岡独自の多様性に富んだイタリア料理の世界を構築し、同時に多種多様なイタリアワインを紹介しながら新しい食文化を作ろうとしているのだ。

最後にモトックス・西日本チームの大戸氏が語ってくれた言葉を記載しておこう。

「福岡の街に独自の食文化を作るには様々なアプローチがあると思いますが、大事なのはそれぞれの活動を『続けること』です。続けることにより積み重なった過程が結果を生み出してくれるのです」

モトックスとLucaが目指す道には険しさが予想される。
それでも両者は「続けること」で前に進もうとしているのだ。

 

【左】「Luca Suzumoto」のオーナーシェフ・鈴本紀彦氏。自店だけではなく「グルッポヴィノーカ」の活動を通してイタリアワインの魅力を伝える。【右】まるで知り合いの家に呼ばれたかのようなくつろいだ雰囲気になれる「Luca」の店内。

【左】「Luca Suzumoto」のオーナーシェフ・鈴本紀彦氏。自店だけではなく「グルッポヴィノーカ」の活動を通してイタリアワインの魅力を伝える。【右】まるで知り合いの家に呼ばれたかのようなくつろいだ雰囲気になれる「Luca」の店内。



 




 

取材協力店
NAME:Luca Suzumoto
ADRESS:福岡県福岡市中央区白金1-1-12 アサリコーポラス2F
ACESS:西鉄薬院駅より徒歩3分。駅から渡辺通方面に歩いて『宝来ビル』が見えたら
右折してすぐ。
PHONE:092-406-2740
OPEN TIME:ランチ / 11:30~13:30os ディナー / 18:00~22:00os 水曜定休
HP:http://luca-suzumoto.com/

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