福岡・九州の飲食店を訪れると強く感じることがある。
おそらく多くの人が思う九州らしい飲食店とは、素材感の高い料理をリーズナブルに提供するお店のことだろう。その印象そのままに、九州に出張したサラリーマンの多くは博多の夜、九州の新鮮な魚に舌鼓を打つ。あるいは「九州の代表的な料理は?」と質問した時に出てくる答えの多くは「もつ鍋」「とんこつラーメン」「チキン南蛮」「ちゃんぽん」など、大衆的な料理が殆どだろう。
九州の飲食店の多くは気さくで、温かみがあり、大衆的だ。
そして出てくる料理も気取らず、親しみやすい味の、リーズナブルな料理だ。
おそらく、多くの人はその大衆的な九州の料理と飲食店に魅力を感じている。
しかし、同時に飲食店側もその多くが「それで良い」と自らを規定してしまっている。
そこに、これから先の九州の飲食店を考えた時に大きな落とし穴がある気がしてならないのだ。
国土交通省観光局が内閣に提出し平成24年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」というものをご存じだろうか?
そこには平成32年には国内への海外観光客数を2500万人にすることが明記されている。平成25年の国内への海外観光客数は約11000万人。つまりたった6年後におよそ2.3倍の観光客を国内に誘致する計画になっている。
その数字の実現性の是非はともかくとして、現在政府が国策として観光立国化を目指し海外からの観光客誘致のための施策を展開していることは事実だ。そしてその動きは九州とて例外ではなく、九州にある飲食店も、これから先ますます「外からの眼」にさらされることになる。
今年、ミシュラン福岡・佐賀版が刊行されたこともその1つだろう。そこでの星の与えられ方を見ると納得する部分と、納得できない部分の両方があったのではないだろうか?
その納得できない部分の多くは「自分たちの思う福岡・佐賀らしいお店」の基準から外れたお店に星が与えられた時ではないか?
同様の批判は過去にも東京・関西・北海道・広島と、ミシュランが発刊されるたびに起こっている。地元の人間からしたら納得できない選考基準ではないか?と。しかし、ミシュランはあくまでも「外からの視点」の1つであり、その視点からどういう店が選ばれたかは冷静に見る必要がある。
そして、今まで自分たちが規定していた九州らしさをもう一度見直す必要がある。「本当に自分たちの思う九州らしさがこれからも通用するのか?」と。
ここに書いていることは今までの九州の飲食店のあり方を否定しているわけではない。そこで生まれた九州らしさは、魅力の1つとして間違いなくある。
しかし、フードスタジアム九州はここから先もう一歩前に進んだ「新しい九州らしさ」の誕生を熱望する。
そして、人の動きがより国際的になり情報の垣根もすでに存在しないこれからの情勢の中で、国内外から九州を訪れる人にとっても九州に住む人にとっても「九州は素晴らしい!」といえる魅力を持った「新しい九州の食文化」の誕生をフードスタジアム九州は熱望する。
その誕生を促すためにフードスタジアム九州はここに創刊すると同時に、その活動のマニフェスト8カ条を公開する。
新しい九州の食文化を創造するために。
ここからフードスタジアム九州は活動を始める。
フードスタジアム九州編集長 島瀬武彦
特集
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2014.09.07