今週10月7日にフードスタジアム東京主催のフースタゼミ・業態開発編にサポートとして参加させて頂きました。
業態開発そのものはM&Coの森社長をメインに島瀬が聞き役として話を進めさせて頂きましたが、そこで語られた過去から今に繋がる時代性の話がとても興味深く、その内容の一部をこのコラムを通して九州の皆様ともシェアしたいと思います。
今、40代の経営者の中には、自分が生まれた1970年代前半に起こったことを象徴的に捉えている人もいると思います。
1970年代前半に何が起こったのか?
それは、政治的文化的経済的な転換でした。
1970年には三島由紀夫事件がおこっています。それは1つには国粋主義的な政治運動のその当時での挫折を意味し、同時に文化的には明治から続く文学・小説の文脈が途切れた象徴的な事件でした。
そして1972年のあさま山荘事件では学生運動を中心にした社会的な問題を政治的に解決する方向性の限界を示し、それ以降「しらけ世代」と言われる若者を生み出した背景となりました。(若者と言っても私たちの父親の世代ですが)
さらに1973年には高度経済成長期が終了し「1億総中流化」が謳われるようになり、国民の8割が豊かさを享受する時代に入っていきました。
その豊かさの時代を象徴するように、飲食の世界では1971年に福岡で「ロイヤルホスト1号店」が開業。同じ1971年には「ミスタードーナッツ」が日本進出。さらにこのフースタ九州で「LEGEND」として取り上げた「いろり 山賊」がオープンしたのも同じ1971年でした。
この3店舗に共通するのは豊かさの時代を前提にして「楽しむ外食」を意識した店作りを行っていることです。
ロイヤルホストは「一般の人にも手が届き、なおかつ贅沢感のある店」をコンセプトに人気を博し全国に展開。ミスタードーナッツは開業当初アメリカ文化のもつ贅沢感や高級感を前面に出し、店内にメリーゴーランドが設置されていたのを覚えている人も多いでしょう(今でも福岡の大濠店にはありますね)。いろり山賊はLEGENDでもご紹介したように「目と心のごちそうをお客様に提供する」をテーマに、徹底した店内演出でお客様に感動を与える店として今でも人気の店舗です。
「お客様は楽しむために外食をする」
この事実は、1970年代も今も実は変わりません。
90年代から00年代にかけてファーストフード的な気軽に利用出来て便利な外食が増えました。
しかし、そのような利便性を前に出したお店がマクドナルドも吉野家も苦戦し始めているのは皆さんもご存じだろうと思います。
時代はぐるりと回り、今は今の時代に合わせた形での「楽しむ外食」を実感できる店が必要になって来ているのです。
福岡でも九州全体でも、今元気なお店はそういう楽しさという要素が必ずあります。
お客様の生活環境が40年前とは違います。だから楽しさの質も違う。
けれども今も昔もお客様の求めているものは変わっていません。
外食は楽しいから外食なのです。
それは私達飲食に関わる人間は決して忘れてはいけないことなのです。
森社長、示唆に富むとても素晴らしいお話をありがとうございました!
島瀬武彦
1971年7月20日生まれ。山口県山口市出身。学習院大学フランス文学科中退後、家業の喫茶店の2代目として飲食店経営に関わる。山口県山口市徳地という山の中の田舎の立地に苦戦する中で、神田昌典氏が主宰する「顧客獲得実践会」に参加。通販業界が使うダイレクトレスポンスマーケティングの手法を飲食店の集客に応用することで売上を劇的に改善。2004年よりマーケティング・戦略コンサルタントとして活動。2014年よりフードスタジアム九州編集長を務める。