ワールドカップと言うとサッカーを連想する人も多いと思いますが、コーヒーの世界にもワールドカップがあるのを皆さんはご存知でしょうか?
毎年、日本スペシャリティコーヒー協会が主催するバリスタ・サイフォニスト・ラテアート・カップテイスターズ・ロースティング・ブリューワーズの各分野の国内大会の優勝者が世界大会へと駒を進め、世界中から集まるコーヒーのスペシャリストと熱戦を繰り広げます。
2014年には丸山珈琲の井崎英典氏が日本人で初めてワールドバリスタチャンピオンシップを獲得するなど、日本のコーヒースペシャリストが世界においても高いレベルで活躍しているのをご存じの方もいらっしゃると思います。
実はその世界大会においては今年は日本大会を優勝した3名の福岡県の選手の活躍が期待されています。
バリスタ部門では福岡市薬院のレックコーヒーの岩瀬由和氏。カップテイスターズ部門では大宰府の珈琲蘭館・田原照淳氏。そしてロースティング部門では大野城市の豆香洞コーヒー・江口崇臣氏が5月に開催される世界大会へ挑戦します。
先日とある集まりに参加した際にロースティング部門の江口崇臣氏とお話しする機会がありました。江口氏の師匠は豆香洞コーヒーの店主である後藤直紀氏。後藤氏は2013年の世界大会の優勝者でもあります。
「世界チャンピオンになることがどれほど大変なことか、師匠を通して間近に見ていました。世界大会ではいい結果が出せるよう頑張ります」
とは江口氏の弁。師弟での世界チャンピオン誕生が期待されます。
ここ数年、コーヒーの世界はNY発のサードウェーブ系のカフェの話題で盛り上がっています。
今年は特に「コーヒー界のApple」と呼ばれるブルーボトルコーヒーの日本出店と、オープンと同時に生まれた大行列が話題をさらっています。
「サードウェーブって何だ?」と思われる方もまだ多いと思いますが、サードウェーブ系カフェとは豆の産地と個性に拘りつつ、同時にその豆の個性を活かした抽出方法で1杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れるスタイルを取る店のことを指します。
90年代からスターバックスを中心に話題になった深煎りの豆をエスプレッソマシンで淹れる、いわゆる”シアトル系コーヒー”のことをセカンドウェーブと言います。それとは対極に位置するスタンスからサードウェーブと呼ばれているのが現在のムーブメントですが、実はこれって昔から日本の自家焙煎珈琲店が培ってきたスタンスでもあります。(日本の珈琲専門店の手法をNYのコーヒー好きの若者が真似をすることで生まれたのがサードウェーブだという話もあります)
ただ、昔ながらの珈琲専門店とサードウェーブ系のお店が違うのは、ともするとマニアックな方向へ走りがちであった珈琲専門店に対し、豆のクオリティや抽出方法には同じように拘りながらも、”今の時代”の表現でお店全体をデザインすることでカジュアルでよりオープンな世界観を打ち出しているのがサードウェーブ系のカフェ。
つまりコーヒーに対する難しいことを知らなくとも、より美味しいコーヒーが普通に楽しめるようになるのがサードウェーブ系のカフェなのです。
このサードウェーブ系のカフェはこれから福岡でも様々なお店が台頭してくると予想できますが、ここで注意しておきたいのはサードウェーブ系のカフェの認知が広がるならば、同時に消費者のコーヒーのクオリティに対する意識も向上するであろうということです。
コーヒーは日常的なドリンクであるが故に、専門店でない限りはドリンクメニューの中でも脇役になりがちです。
しかし、店側が脇役と考えているからと言って、お客様の方も同じように捉えているとは限りません。
食後のコーヒーとして明らかに不味いコーヒーを飲んだお客様は、そのお店を「美味しい店」と評価するでしょうか?
そのお店で最後に口にしたものがコーヒーであれば、その味がそのお店全体の評価になることすらあると思った方がいいでしょう。(最後に口にしたものの印象が、そのお店の印象になるのです)
サードウェーブ系のカフェの動き、そしてコーヒーのクオリティに対する消費者の意識、注目しておいた方が良いと思います。
もちろん、それはそれとしてコーヒー世界大会へ出場される3名の方々の活躍には期待しています。
選手の皆さんの活躍、そしてこれから台頭してくるであろうサードウェーブ系カフェ、それらがこれからの福岡のコーヒーのクオリティを高めます。
お客様は常に「今よりも美味しい何か」を求めているのです。
島瀬武彦
1971年7月20日生まれ。山口県山口市出身。学習院大学フランス文学科中退後、家業の喫茶店の2代目として飲食店経営に関わる。山口県山口市徳地という山の中の田舎の立地に苦戦する中で、神田昌典氏が主宰する「顧客獲得実践会」に参加。通販業界が使うダイレクトレスポンスマーケティングの手法を飲食店の集客に応用することで売上を劇的に改善。2004年よりマーケティング・戦略コンサルタントとして活動。2014年よりフードスタジアム九州編集長を務める。