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九州の食材

【九州の食材】椎茸・平茸 福岡県朝倉郡東峰村(農)宝珠山きのこ生産組合 川村倫子~農業をする農学博士


 

サブ1

 

「実は実家がきのこの生産者だということは就農しようと考えた後に気がついたんですよ」
そう言いながら、コロコロと陽気な笑顔を見せるのは、(農)宝珠山きのこ生産組合の川村倫子さん。

川村さんは福岡県朝倉郡東峰村の宝珠山地区で40年前より椎茸栽培をおこなう農家に生まれ、高校卒業後は「薬用きのこの研究がしたい」と農学部への進学を選択。そのまま薬用きのこの栽培研究を大学で行い、大学院にまで進学し博士号を取得。
その経歴だけを聞くと最初から実家の椎茸栽培を引き継ぐために大学での研究を行ったのではないかと考えてしまうが、実際はそうではなかった。

もちろんきのこに興味を持った背景には実家の影響であったのは確かだろう。
だが、それ以上にきのこの世界は川村さんを虜にする魅力を持っていた。

大学院での研究を通じ、川村さんが感じたのはきのこの「狭くて深い世界」。
それは研究の過程で知り合った業者の人達が実家の椎茸栽培と直接の繋がりはないように見えて、実は間接的には様々な繋がりを持っていることが分かった時。
椎茸栽培という狭い世界でも、様々な地域の様々な人たちが直接的間接的に関わり合って成立していることが分かった時、川村さんはきのこ栽培の世界に奥深い魅力を感じたのだった。

さらに大学院での研究を通じて自分が研究者向きではないと自覚した川村さんは、その後の進路を考えた時「良い物を作り出してお客様を喜ばせたい」という想いからきのこの生産者になることを考え始める。そしてそう考え始めた後から、実は自分の実家がそのきのこ生産者であることに気がついたのだった。

ちょっとお間抜けな話にも聞こえるが、実は川村倫子という生産者の枠を越えた生産者が誕生した背景には、川村さんが持つ“今、自分が興味のあるものや楽しいと思うこと”を直感的に嗅ぎわける嗅覚があってのこと。
彼女は自分の進路をその嗅覚に従って選択し、その選択の上に実家が乗っかっていただけとも言える。

(農)宝珠山きのこ生産組合4代目の川村倫子さん。農学博士の称号を持つ「農業する農学博士」でもある。

(農)宝珠山きのこ生産組合4代目の川村倫子さん。農学博士の称号を持つ「農業する農学博士」でもある。



 

サブ2

 

 

川村さんのことを“生産者の枠を越えた生産者”と表現するには理由がある。
その1つが福岡県内外のきのこ好きの人達と積極的な交流を行い、2013年に熊本で開催された「きのこ文化祭」や阪神百貨店で開催された「ドキドキきのこフェスティバル」へ参加、さらには今年の11月24日に福岡市中央区の警固神社で開催された「フクオカきのこ大祭」の実行委員会の代表を務めるなど、きのこ生産者というだけではなく「福岡できのこが一番大好きな人といえば川村倫子」と言いたくなるような活動を展開していること。

そのことに話を向けると「もう、私の人生きのこまみれですよ」と川村さんはやはり楽しそうにコロコロと笑う。
「でも、私は楽しいからOKです。楽しい所に人は集まるんですね。そして、そこで生まれるきのこがつなぐ“縁”が私のモチベーションになっています」
そう川村さんは明るい表情で語ってくれた。

さらに川村さんは商品プランナーとしての側面も持っている。
元々は椎茸生産のみを行っていた(農)宝珠山きのこ生産組合だったが、産直の生椎茸を持って催事への出店をすると、確かにお客様からは好評を頂けるが売上そのものはそれほど伸びない事実に気がつく。

そこで3年前より「生椎茸だけではなくお客様にもっと選択の幅を提案したい」と加工品の商品化を手掛け、乾燥椎茸を使った佃煮「タレ漬け天竺」、「タレ漬け天竺」のタレから派生した万能タレ「きのこ屋のうまかっ!たれ」、塩麹ときのこを合わせた調味料「きのこうじ」、きのこと昆布の植物性の旨みに特化した麺つゆ「やっぱきのこだし」と、次々にきのこを使った加工商品を生み出していったのだ。

それらの商品は「他のところにはない」新しさとネーミングの楽しさから各方面で好評を獲得し催事への出店依頼が増加。
さらには宝珠山地区に生産所兼直売所を置くと共にWEBでの加工商品の直販も開始。
それらの活動を通じて生産・加工・販売を生産者が一括して行う農業の6次産業化のモデルケースとしても注目を集め、現在は講演の仕事も増えているという。

川村さんが生みだした加工商品【画像左】乾燥椎茸を使った佃煮「タレ漬け天竺」【画像右】塩麹ときのこを合わせた調味料「きのこうじ」

川村さんが生みだした加工商品【画像左】乾燥椎茸を使った佃煮「タレ漬け天竺」【画像右】塩麹ときのこを合わせた調味料「きのこうじ」



 

サブ3

 

 

多彩な活動を見せる川村さんだが、そのベースはやはり(農)宝珠山きのこ生産組合の作る美味しいきのこにあることは間違いない。

(農)宝珠山きのこ生産組合は川村さんで4代目になる代々のきのこ生産農家。
元々は原木椎茸の生産を行っていたが20年前に台風の被害で原木が全滅した年をきっかけに屋内で栽培する菌床栽培と呼ばれる栽培方法に切り替え、同時に春と秋のみであった椎茸の出荷を1年中行える体制を確立。

生椎茸というと原木椎茸をブランド品のように崇める風潮が今でもあるが、川村さんは「菌床栽培椎茸が原木椎茸より美味しくないということはありませんよ」と言う。
その中でも(農)宝珠山きのこ生産組合の椎茸は肉厚で軸のしっかりした椎茸を生産しており、その美味しさの理由を尋ねると「宝珠山の水と空気です」という力強い答えが川村さんから帰って来た。

水は宝珠山に湧き、日本名水100選にも選ばれた“岩屋湧水”。
その湧水を使い、さらに清冽な宝珠山の空気に触れることで健康的な椎茸が育成される。
さらに屋内で栽培する菌床栽培のメリットとして完全無農薬での栽培が可能で、安全で美味しい椎茸が生産されている。

現在(農)宝珠山きのこ生産組合の主力生産きのこは椎茸の他には平茸がある。
こちらも菌床に工夫を重ねることで椎茸同様に安全で健康的で美味しい平茸をお客様にお届けすることが出来ているのだ。

 

最後に川村さんに農家としてこれからの目標をお聞きすると次のような答えが返ってきた。
「催事やイベントのようにこちらから出向いて私共のきのこや商品を知って頂くだけではなく、工場見学や栽培体験をして頂くことで宝珠山へ足を運んでもらえるようにしていきたいと考えています。今、全国各地のきのこの名所を巡る“きのこツーリズム”という動きがあるんですよ。その動きに宝珠山も乗れるようにして行きたいと思っています」

その答えの中にはきのこに対する愛情と宝珠山に対する愛情が両方含まれている。

きのこを愛し、宝珠山を愛しながら生産者という枠を越えて活動する川村倫子さん。
これからの活躍に期待が集まる福岡の農家の1人だ。

(農)宝珠山きのこ生産組合が栽培する椎茸と平茸。菌症栽培により安全で健康的、なおかつ宝珠山の水と空気で育まれる美味しさがウリ。

(農)宝珠山きのこ生産組合が栽培する椎茸と平茸。菌床栽培により安全で健康的、なおかつ宝珠山の水と空気で育まれる美味しさがウリ。



 

店舗データ

店名 (農)宝珠山きのこ生産組合 代表 川村卓三
住所 福岡県朝倉郡東峰村小石原鼓334-1
アクセス 大分自動車道杷木ICを下車。県道52号線を北に向かい、国道211号線に合流したところで南に下り約5分。
電話 担当者不在の場合が多いのでご連絡はHPに記載しているFAXもしくはメールからお願いいたします
営業時間 事務所 9:00~16:00
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