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「おいしい」を信じるからこそ押し付けない「自然派」。福岡・春吉に「自然派ビストロCORE HARUYOSHI ver.」が開業。化学調味料不使用、地産地消、生ゴミゼロのこだわりを追求

代表の下田之総氏(左)とシェフの山下翔太郎氏。下田氏は「こういうものを作ってほしいという思いを形にしてくれるシェフです」と話す
テラス席もある落ち着いた雰囲気の外観
オープンキッチンがある店内。カウンターに座れば料理人の仕事を視覚でも味わいながら食事ができる
燻製マッシュルームのクリームソースをたっぷりとかけた「半熟卵とスモークマッシュソースのポテトサラダ」
「赤牛のミートラザニア」。赤牛のミートソースを20層に重ねた淡路麺業の生パスタと共に楽しめる

人気店が増え、年々賑わいを見せる福岡市の春吉エリアに9月14日、「自然派ビストロCORE HARUYOSHI ver. (コア 春吉バージョン)」が登場した。1号店である白金本店「自然派ビストロCORE」のオープンから3年と経たず、次のステージの幕開けとなった。コンセプトは1号店から一貫して、化学調味料を一切使わない調理法で素材の良さを最大限に生かすこと。気取っているわけでも、流行を追っているわけでもない。代表の下田之総氏は「だってそれが一番おいしい。素材の良さを生かすことが一種の調味料だと思う」と話す。

無添加、オーガニック、ナチュラル…。巷には「体にやさしそう」なキャッチフレーズがあふれている。下田氏は「正直、『自然派』と名乗るのは勇気がいることだった」と明かす。それでもあえて「自然派」を店名に入れたのは、「コンセプトに忠実に、正々堂々やりたい」という決意の表れだろう。食材の仕入れ先にこだわるのはもちろん、「生ゴミゼロ」を実行し、スタッフの働き方改革も進める。「自然派」の名に相応しい店づくりを突き進めている。

食べることが好きではなかった子ども時代

東京都出身の下田氏は都内を中心に多店舗を展開するグローバルダイニングなどを経て、「完全無化調」を掲げるレインボーカンパニーで店長職を経験。2016年、幾度か訪れる中で 「お客様の心を掴むオーナーたちがいるレベルの高い飲食店が多い」と感じていた福岡で 独立を果たした。

20年近く飲食サービスの業界に身を置いてきた下田氏だが、「子どもの頃は食べることが好きじゃなかったんですよ」と振り返る。 それでもコンビニのサンドイッチなどは子どもが喜びそうなものだが、「どうしても舌があの化学調味料の味を受け付けなかった」という。純粋に「おいしい」と思えたのは、母親が作る味噌汁や塩で握ったシンプルなおにぎり。大人になってからも、化学調味料を避けることが難しい外食よりも「自分で作ったものが好き」と話す。幼少期の自身の体が自然と受け入れた「おいしい」の感覚を今も大切にしている。

「自分は医者ではないけれど、食べるものは体にとってものすごく重要だと思う。日々プラスチックのようなものばかりを食べている現代社会の多くの人が、『今のうちにどうにかしないと』と薄々は感じているのではないでしょうか」。コアの料理は化学調味料を一切使わない。油もエクストラバージンの大豆油やオリーブ油を使用し、ファーストフード店の揚げ油などに使われることも多いトランス脂肪酸を避けている。ソースなどに使うトマトも缶詰ではなく、フレッシュな生野菜だ。

「僕らの後ろには食材のプロフェッショナルたちが大勢いる」

当然、九州産を主とした食材の仕入れ先にもこだわる。チーズはしぼりたての牛乳を使った通称「菊池モッツァレラ」。生産者は熊本県菊池市のピザ専門店「イルフォルノドーロ」を運営するフォルナ・ヴェスタだ。無添加のソーセージは鹿児島県種子島産の黒豚を使ったものを厳選。福岡県うきは市産の卵は健康食品としても人気の酵素を食べて育ったニワトリが産む極上の品だという。下田氏は「僕たちは料理を提供するサービスの表舞台に立っているけど、後ろには食材を作るプロフェッショナルが大勢いる。それも、頑張っている多くは僕らと同世代の30代、40代。そんな生産者さんたちのことを多くの人に知ってもらいたいからこそ、僕たちは店を成長させて、有名になりたいんです」と力を込める。

「パテカン」を食べて仲間入りした料理人

食材へのこだわりを料理へと昇華させるシェフが、下田氏とはレインボーカンパニー時代の同僚という山下翔太郎氏だ。イタリアンなどでの経験を生かしながら、和洋中を問わず添加物が存在しなかった「昔ながら」の調理法を日々研究している。

「半熟卵とスモークマッシュソースのポテトサラダ」(690円)は燻製マッシュルームのクリームソースをたっぷりとかけた一品。南阿蘇産の赤牛を贅沢に味わえる「阿蘇赤牛の赤身ステーキ」(80g、1850円)の他、「赤牛のミートラザニア」(1540円)ではミートソースにした赤牛を20層に重ねた淡路麺業(兵庫県淡路市)の生パスタと共に堪能できる。その他のラインナップも「甲イカのイカスミピッツァ」(1340円)や「自家製オイスターソースのイカ焼きそば」(1240円)などバリエーション豊富。「博多春菊の手づくり餃子」(690円)や「一番搾り大豆油のアヒージョ」(990円)などビールや40種類ほどあるワインなどのお酒が進みそうな品々も並ぶ。

洋食店のレベルをジャッジする際の基準にもされる「パテ・ド・カンパーニュ」(790円)は同店の「手間暇かけてこそのおいしさ」を体現していると言えそうだ。肉の旨味を引き出すのは、大量の野菜を4時間ほどバターとともに煮詰めて作ったレディクション。デンマークのホテルなどで経験を積み、現在山下氏と共に厨房に立つ料理人もこのパテカンに感動して入店を決めたという太鼓判付きの一品だ。臨機応変にハーフサイズの対応も可能だという。

「自然派」は調理のその後も手を抜かない。生ゴミは全て福岡県久山町の農家に引き取ってもらい、堆肥化している。この対比を使って農家が育てる旬の無農薬野菜も仕入れており、地に足の着いた小さな循環型社会を実現させている。

「『自然派』を押し付けない。それが愛」

下田氏は「真面目なことを真面目にやっちゃだめだと思うんです」と語る。「『自然派』を押し付けなくても、そこに『おいしい』があれば大切なことは意外と伝わると思う。良いものをそっとそこに置いておくようなサービスをしたい。それが愛じゃないでしょうか」。東京から飲食の激戦区・福岡にやってきた旅人気質のサービスマンがにっこりと笑った。

シェフの山下氏は1号店の開業に合わせ、東京から家族と共に福岡に移住した。ついてきてくれる社員やアルバイトたちのためにも、「人件費は高めに設定している」と下田氏。2号店の出店を決めたのも、1店舗のみの運営では収入に限界を感じ始めていたためだ。今月からは両店で定休日を設けるなど、働き方改革も着々と進めている。

年内にも組織を株式会社化するのに合わせ、「価値を売れ、魂を売るな」を社訓に掲げる。下田氏らの店づくりに明るい飲食の未来を感じずにはいられない。

(取材=港そら)

店舗データ

店名 自然派ビストロCORE HARUSYOHI ver. (コア 春吉バージョン)
住所 福岡市中央区春吉2-12-11 アクラス天神南101
アクセス 渡辺通駅徒歩7分(春吉交番横、セブンイレブン向かい)
電話 092-715-3595
営業時間 17:00-2:00
定休日 水曜日(祝日の場合は営業)
坪数客数 13坪、30席(カウンター7席、テーブル16席、テラス7席)
客単価 4000円〜5000円
関連リンク FB・春吉店
関連リンク FB・白金本店

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